古典〜ジャズをつなぐ、北欧音楽の真骨頂。ジャンヌ・マルク、時を超える賛美歌

Janne Mark - Kontinent

北欧らしい“現代の賛美歌”。Janne Mark『Kontinent』

デンマーク出身のヴォーカリスト/作曲家のジャンヌ・マルク(Janne Mark)のACTレーベルからの新譜『Kontinent』。前作『Pilgrim』(2018年)同様にノルウェーの人気トランペッター、アルヴェ・ヘンリクセン(Arve Henriksen)がプロデュースし、演奏でも全面的に参加している北欧ジャズの要注目作品だ。

アルバムは“賛美歌”をコンセプトにしているが、私たちが良く知る賛美歌をイメージして聴き始めると肩透かしをくらう。一般的な賛美歌が神への礼讃であるなら、彼女の賛美歌は土地の歴史への敬意や、より内省的な祈りのニュアンスがあり、その精神的な世界観の深みは底が知れない。

今作ではジャンヌ・マルクのオリジナルの他、北大西洋のトラディショナルや、7世紀のケルトの子守唄(7)「Taladh Chriosta」、デンマークの詩人Naja Marie Aidt(1963年 – )の詩の引用など豊かな表現力で惹き込む。すべての楽曲の創造的なアレンジは2020年春のレコーディングの中でそれぞれのミュージシャンから自発的に提示されたもののようだ。

演奏面で特筆すべきはノルウェーの伝統楽器を弾くニルス・オークランド(Nils Økland)の参加だろう。ECMからリリースのリーダー作でも知られる彼が弾くハーディングフェーレや、ヴィオラ・ダモーレといったヴァイオリン属の古楽器の響きは、日本の尺八を連想させるアルヴェ・ヘンリクセンのトランペットの音色とも相まって荘厳で神秘的な雰囲気を醸し出す。
ヘンリク・グンデ(Henrik Gunde)のピアノも静謐かつ思索的で美しい。

(1)「Altid allerede elsket」

ジャンヌ・マルク(Janne Mark)は1973年、デンマークのベストユールランドに生まれた。1996年から2001年にかけてコペンハーゲンの音楽院で学んでいる。2004年に『Indenrigs Udenbys』でデビューしているが、この頃はポップス的な表現が目立っていた。

2013年に『Salmer Fra Broen』から現在の賛美歌を主軸とした作風になり、ACTからリリースされた2018年作『Pilgrim』で国際的に広く知られるようになる。
賛美歌、ジャズ、北欧の民謡をベースにした自身の作詞作曲による瞑想的な音楽観が持ち味で、物静かで深みのある音楽には絶賛の声が寄せられている。

Janne Mark – vocals
Arve Henriksen – trumpets, spoken word, electronics
Nils Økland – hardanger fiddle, viola d’amore, violin
Henrik Gunde – piano, harmonium, mellotron, vibraphone
Esben Eyermann – double bass
Bjørn Heebøll – drums

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