魔術的リアリズムへの讃歌。イタリアとラテンアメリカを繋ぐ魔法のような作品『タンゴ・マコンド』

Daniele di Bonaventura, Paolo Fresu & Pierpaolo Vacca - Tango Macondo

イタリアとラテンアメリカを繋ぐ魔法のようなアルバム

「マコンド」という街の名を聞いて、えも言われぬ憧憬と寂寥を胸のうちに感じる人は多いだろう。
ラテン文学の名作『百年の孤独』(ガブリエル・ガルシア=マルケス)で描かれたブエンディア家を中心とした7世代にわたる100年間の盛衰の物語は現実の世界にも大きな影響をもたらしたし、魔術的なラテンアメリカの伝承や、抗争の歴史の末に無秩序なパワーバランスがどういう訳か一定の秩序を築き上げる様は多くの人に深い関心を抱かせたはずだ──人間の営みとは、こうも愚かで愛おしいものなのか、と。

そんなラテンアメリカの架空の街の名を冠した本作『Tango Macondo』は、イタリアのバンドネオン奏者ダニエレ・ディ・ボナヴェンチュラ(Daniele di Bonaventura)、トランペット奏者パオロ・フレス(Paolo Fresu)、そしてアコーディオン奏者ピエールパオロ・ヴァッカ(Pierpaolo Vacca)の3人による共同名義の作品だ。彼らが紡ぐ物語はグロテスクな仮面のカーニヴァルで知られるイタリア・サルデーニャ島バルバージャ地方の小さな村マモイアーダから、前述の架空の街マコンドへの幻想的な旅路をテーマとする。

アルバムはアストル・ピアソラ作曲の(1)「Alguien Le Dice al Tango」で幕を開ける。ここではイタリアの歌手マリカ・アヤン(Malika Ayane)がゲストシンガーとして参加し、スペイン語で抒情的な詩を見事に歌い上げる。つづくパオロ・フレス作曲(2)「Il venditore di metafore」はエフェクトやエレクトロニックも用い、伝統と現代性の間に橋を架ける。ケルト音楽を彷彿させる(4)「Dumburudù / Dillu」、マコンドをタイトルにした(5)「Macondo」はパオロ・フレスのトランペットが高らかに誇りを歌う。ダニエレ・ディ・ボナヴェンチュラがそっと添えるピアノも粋で素晴らしい。

マリカ・アヤンが歌う(1)「Alguien Le Dice al Tango」

郷愁を誘うバンドネオン、アコーディオン、トランペットという編成も非常に効果的だ。
そんな中でトスカ(Tosca)が華を添える(6)「El Día Que Me Quieras」、エリサ(Elisa)が歌う(10)「Volver」と適度にヴォーカル曲を挟み、飽きさせずに世界観に浸らせる工夫も凝らされている。

エリサ・トッフォリ(Elisa Toffoli)が歌う(10)「Volver」

Paolo Fresu – trumpet, flugelhorn, effects, piano
Daniele di Bonaventura – bandoneon, effects, piano
Pierpaolo Vacca – accordion, effects

Guests :
Malika Ayane – vocal (1)
Tosca – vocal (6)
Elisa – vocal (10)

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