サックス奏者ウィル・ヴィンソン、コード楽器を伴わない意欲的なトリオ/カルテット新譜

Will Vinson - Tripwire

ウィル・ヴィンソン新譜はサックス/ベース/ドラムスという編成

イギリス出身のサックス奏者/作曲家ウィル・ヴィンソン(Will Vinson)が、絶賛された前作『Trio Grande』に続く新作『Tripwire』をリリースした。
前作ではアントニオ・サンチェス(Antonio Sanchez, ds)、ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman, g)というメンバー構成も注目されたが、今作でもマット・ペンマン(Matt Penman, b)、エリック・ハーランド(Eric Harland, ds)、そして2曲でメリッサ・アルダナ(Melissa Aldana, sax)がゲスト参加するというそれだけで注目に値する作品となっている。

アルバムには全体的に自由な感覚と、同時にピンと張り詰めた緊張感が漂っている。エレクトリック・ピアノの音が補助的に鳴らされる(4)「Fable」を除き、全編でピアノやギターなどのコード楽器が存在しておらず、「自由の精神と崩壊のリスクを併せ持った何かをやりたかった」とウィル・ヴィンソンが語っている通り決められたコード進行がありながらも比較的自由な演奏が繰り広げられ、メロディー楽器であるサックス、ベースともに伸び伸びと演奏されているのが興味深い。

(1)「Tripwire」

アルバムにはウィル・ヴィンシンのオリジナルのほか、昔からのお気に入りだったというカウント・ベイシー(Count Basie)作曲の(2)「Blue and Sentimental」、ジェローム・カーン(Jerome Kern)作曲「All the Things You Are」 を自由に再解釈した(3)「Things」といったカヴァーも。

メリッサ・アルダナとのサックス同士の共演も難しいチャレンジだとは思うが、互いに様子を見つつ出るとこは出るといった心理戦にも近しい絡み合いも含めて面白く、意欲的なジャズ作品として楽しめる。

Will Vinson – saxophone
Matt Penman – double bass
Eric Harland – drums
Melissa Aldana – saxophone (3, 6)

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