ウェールズ出身ジャズハープ奏者アマンダ・ホワイティング、優しく力強い『The Liminality of Her』

Amanda Whiting - The Liminality of Her

ジャズハープ奏者アマンダ・ホワイティング新作

ウェールズ出身のグランドハープ奏者/作曲家アマンダ・ホワイティング(Amanda Whiting)の2024年新譜『The Liminality of Her』が絶品だ。クラシックを学んだ確かな技術を基底に持ちながら、ジャズの即興や民族音楽的な独特のスケールを試みる演奏は彼女の好奇心の表れ。バンドメンバーとのアンサンブルも熱く、比較的珍しいジャズ・ハープの近年における最高の作品のひとつと言えるだろう。

ハープと弓弾きのダブルベースのデュオで演奏される短いイントロのあとの(2)「Facing the Sun」が良い。ハープの代名詞である美しいグリッサンドや、ペダルを駆使した奏法は聴きどころ満載。

5拍子で演奏される(3)「Intertwined」にはゲストで歌手ピーチ(PEACH.)が参加。アンサンブルではダブルベースを弾くアイダン・トルネ(Aidan Thorne)の力強い演奏が耳を惹く。後半の彼のソロなど若干走り気味で決してリズムが良いわけではないのだが、それがむしろ熱く人間味を増し、非常に魅力的な演奏となっている。

(3)「Intertwined」

(5)「Nomad」はイントロで日本旋法(基音、長2度、短3度、完全5度、短6度のスケール)を用いており、まるで雅楽のよう。テーマに入ると雅楽的要素は薄くなり、中東音楽の雰囲気が漂う。タイトル“遊牧民”のイメージからデューク・エリントン(Duke Ellington)によるジャズ・スタンダード名曲「Caravan」の空気を感じさせる。

(4)「Liminal」

(7)「Waiting to Go」にはこれまでも度々アマンダ・ホワイティングと共演してきたチップ・ウィッカム(Chip Wickham)がフルートで参加。

今作でもっとも印象的に感じるのは、ハープという楽器から一般的に連想される女性的な柔らかさだけではなく、非常に力強く信念を感じさせる音が通底していることだ。これはアマンダ・ホワイティングの演奏によるものというよりも、周囲のバンドメンバーに拠るところが大きい。ベースもドラムもパーカッションも、とにかく音が強い。それは時に荒削りな一面も見せるが、そうした粗野な部分も含め、素晴らしく独創的で魅力的な作品だと感じた。

Amanda Whiting – harp
Aidan Thorne – electric bass, double bass
Jon Reynolds – drums
Mark O’Connor – percussion

Guests :
Chip Wickham – flute (7)
PEACH. – vocals (3, 9)

Amanda Whiting - The Liminality of Her
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