混沌と秩序の絶妙なバランスがヤバい。激推し次世代ネオソウル・バンド『30/70』

30/70 - Fluid Motion

圧倒的な技量に裏付けされたネオソウル・バンド『30/70』

ハイエイタス・カイヨーテ(Hiatus Kaiyote)を輩出したオーストラリア・メルボルンから現れた音楽集団、30/70 Collective がとてもハイセンスで面白い。ネオソウル(ソウルミュージックにR&B、Hip Hop、スピリチュアルジャズ、ハウスなどの要素が混ざった音楽ジャンル)の新たな担い手として、2015年のデビュー作『Cold Radish Coma』から注目されていたバンドのようだ。

彼らの最新作は2019年の3rdアルバム『Fluid Motion』。とにかく一聴いただければ、随所に非凡な感性が散りばめられた現代最高峰のバンドとして 30/70 という検索しにくいこのグループを覚えることになるだろう。

別プロジェクト Z.Z.x olive tree のドラマーとして来日経験もある天才ドラマー、ジギー・ツァイトガイストが生み出す驚異のグルーヴに、ファンキーなベース、サックスが絡む。ローズピアノやシンセは控えめながら効果的に空間を支配し、少しハスキーな声質が魅力のアリーシャ・ジョイが適度にソウルフルに歌い上げる。

(5)「Tempted」はアフリカ音楽の影響も強い複雑なリズムに、Jazzyなサックス、そして洗練されたダブ処理が印象的なキラートラックだ。混沌と秩序のぎりぎりのバランスで有機的にグルーヴする、何度も聴き返したくなる絶妙なサウンドだ。

(5)「Tempted」のMV。ちょっとカッコ良すぎないですか、これ…。

注目されるメルボルンの音楽シーンの最注目株

30/70 の中核メンバーは紅一点のヴォーカル、アリーシャ・ジョイ(Allysha Joy)、ピアノのジャロッド・チェイス(Jarrod Chase)、ギターのトム・マンスフィールド(Tom Mansfield)、ドラムス/パーカッションのジギー・ツァイトガイスト(Ziggy Zeitgeist)、ベースのヘンリー・ヒックス(Henry Hicks)の5人。ここにサックスやパーカッションなども絡み、最大11人程度の大所帯で録音やツアーを行っているようだ。

2015年デビュー作『Cold Radish Coma』がローカルヒートし、その後ブラッドリー・ゼロ(Bradley Zero)やジャイルス・ピーターソン(Gilles Peterson)などUKの大物DJも激推しした2017年作『Elevate』で一気に世界的にブレイクした。

より洗練された今作『Fluid Motion』は各楽器が主役を張れるサウンドも素晴らしく、脇役にまわっているパートが一切ないバンドサウンドが印象的だ。アリーシャ・ジョイのヴォーカルに頼らないインスト曲もあり、バンドとしての技量の高さも伺える。

知名度で先行する同郷のハイエイタス・カイヨーテ(Hiatus Kaiyote)と比べられがちなのは仕方ないとして、個人的にはぜひ 30/70 には彼らを超える活躍を見たい、と思う。

(9)「Backfoot」のMV。
圧倒的にクレイジー(褒め言葉)。
30/70 - Fluid Motion
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