特に順位は関係なく、2023年にもっとも感銘を受けたアルバムを10枚に絞って紹介します。
ほんとは10枚に絞り切ることが難しいくらい、今年もたくさんの素晴らしい音楽に出会えました。
総評はweb版ラティーナ『e-magazine LATINA』に寄稿させていただいています。そちらもぜひご覧ください。
- 1 ① Áua / Clara & Flaira(ブラジル)
- 2 ② Bewitched / Laufey(アイスランド/中国)
- 3 ③ Arba / Itamar Borochov(イスラエル)
- 4 ④ As much as it takes / Faraj Suleiman(パレスチナ)
- 5 ⑤ Silent Tears: The Last Yiddish Tango / Payadora Tango Ensemble(カナダ)
- 6 ⑥ The Belly Button of the World / Goran Bregović(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
- 7 ⑦ Knower Forever / Knower(アメリカ合衆国)
- 8 ⑧ ELEMENTS / Foehn Trio(フランス)
- 9 ⑨ The Past Is Unpredictable, Only the Future Is Certain / Vuma Levin(南アフリカ/オランダ)
- 10 ⑩ Gente / Leo Middea(ブラジル)
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① Áua / Clara & Flaira(ブラジル)
ブラジルの女性デュオ、クララ&フライラ(Clara & Flaira)のアルバム。いっさい飾ったところのない、素直で美しい音楽が繰り広げられます。コンセプト、編曲、演奏、歌、そのどれもがあまりに繊細かつ素晴らしく、今年一番聴き返した作品となりました。
② Bewitched / Laufey(アイスランド/中国)
すでにSNS世代の新しいスター、あるいはアイドルと言って過言ではなくなったレイヴェイ(Laufey)。非凡な作曲センス、落ち着いていて大人びたヴォーカル、ギターやチェロやピアノを弾きこなす才能。そして等身大でどこか幼さの残る詩情。
まさに20年ほど前に彗星のように現れたノラ・ジョーンズ以来のポテンシャルかと思ってましたが、今年のホリデーシーズンにはついにそのノラ本人とも共演を果たしました。
③ Arba / Itamar Borochov(イスラエル)
これもめちゃくちゃ聴きました。イスラエルのトランペッター、イタマール・ボロホフ(Itamar Borochov)が微分音(クォーター・トーン)トランペットを携えて録音した究極的な中東ジャズ。派手さはないものの、魂に沁み入るような名盤です。
④ As much as it takes / Faraj Suleiman(パレスチナ)
パレスチナの現状を音楽という表現を通じて訴える“パレスチナ初のジャズ・ピアニスト”ファラジュ・スレイマン(Faraj Suleiman)の新作。プログレッシヴ・ジャズとも形容すべき楽曲と、彼のピアノ演奏には抑えきれない怒りや悲しみが込められており、激しく心を揺さぶられました。このアルバムは9月30日にリリースされましたが、10月7日のあの出来事以降、彼は所謂“西側のSNS”からぱたりと姿を消してしまいました・・・。
⑤ Silent Tears: The Last Yiddish Tango / Payadora Tango Ensemble(カナダ)
ナチス占領下のポーランドでホロコーストを生き延びた人々の記憶と詩で辿る深い悲しみの物語を、ヴァイオリンやピアノ、バンドネオンを中心としたタンゴで歌うカナダのパヤドラ・タンゴ・アンサンブル(Payadora Tango Ensemble)の傑作。歴史は繰り返すと言いますが、昨今の世界情勢を見るにつけ、やり場のない怒りと悲しみに打ち拉がれます。
⑥ The Belly Button of the World / Goran Bregović(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教が共存し“バルカン半島のエルサレム”と呼ばれるサラエボに生まれ育った鬼才ゴラン・ブレゴヴィッチ(Goran Bregović)の新作。それぞれの宗教とそれを信仰する人々をテーマとし、各宗教の信徒である3人のヴァイオリニストをソリストに迎えた意欲作です。
⑦ Knower Forever / Knower(アメリカ合衆国)
Knower名義としては7年ぶりのアルバム!ルイス・コールとジェネヴィーヴ・アルタディが、今作でも見事にその異才っぷりを発揮してくれました。とにかくクセになるサウンド。
⑧ ELEMENTS / Foehn Trio(フランス)
ヨーロッパ最先端のピアノトリオの一角に名乗りをあげたフランスのフェーン・トリオ(Foehn Trio)。個性的で刺激的な楽曲の構築美に痺れる一枚です。
⑨ The Past Is Unpredictable, Only the Future Is Certain / Vuma Levin(南アフリカ/オランダ)
南アフリカのギタリスト/作曲家ヴマ・レヴィン(Vuma Levin)と、オランダ・アムステルダムの管弦楽団アモック(AM.OK)の共演によるラージ・アンサンブル作品。南アフリカの伝統へのリスペクトと、現代的・先鋭的なジャズサウンドが混在した豊かなアルバムです。
⑩ Gente / Leo Middea(ブラジル)
ドライブのBGMに重宝したアルバムです。常に良作を出し続けるブラジルのレオ・ミデア(Leo Middea)の2023年新作は、爽やかさに滲む絶妙のサウダーヂ感が素晴らしい最高のブラジリアン・ミュージックでした。