- 2026-08-05
- 2026-08-04
古来より人類がその叡智をかけて探求した“宇宙創世”を辿る旅。スルジャン・イヴァノヴィッチ・カルテット新譜
ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォ出身のドラマー、スルジャン・イヴァノヴィッチ(Srdjan Ivanovic)が率いるカルテット「Blazin' Quartet」の2026年新譜『Cosmogonie』は、ギリシャ神話の天地創造(Cosmogony)にインスパイアされた、壮大なコンセプト・アルバムだ。
ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォ出身のドラマー、スルジャン・イヴァノヴィッチ(Srdjan Ivanovic)が率いるカルテット「Blazin' Quartet」の2026年新譜『Cosmogonie』は、ギリシャ神話の天地創造(Cosmogony)にインスパイアされた、壮大なコンセプト・アルバムだ。
たとえベーシストのソロ・アルバムだとしても「ベースばかりが目立っている」ような作品は近年は少なくなってきたように思うが、モヒニ・デイ(Mohini Dey)に関してはその法則は当てはまらないようだ。 1996年にインド・コルカタで生まれ、両親の影響で幼少期からインド古典音楽やジャズ、フュージョン、メタルなどに親しみ、10歳前後でプロとして音楽活動を開始。10代中盤になるとその超絶的な技巧で世界的な注目を浴びるようになり、現在では国際シーンにおける女性ベーシストのロールモデルと言われるまでになったヴァーチュオーゾなのだから、やはり華やかに目立つことでこそ、その真価が発揮されるものらしい。
パンデミックの最中、ニューヨークの公園や街角で演奏する動画をSNSに投稿し、世界中の注目を集め急速にフォロワーを獲得したジャズ・トリオがいる。彼らはニュー・ジャズ・アンダーグラウンド(New Jazz Underground)。このサックス、ベース、ドラムスというコードレス編成のトリオは、全員がジュリアード音楽院の出身で、ジャズの伝統に根差しながらヒップホップやインターネット文化という時代性を武器に、多くの若者たちからの支持を集めた。
2012年にデュオを組み、ブラジルが生んだ偉大な作曲家エイトル・ヴィラ=ロボス(Heitor Villa-Lobos 1887 - 1959)の楽曲を現代的に再解釈した『Villa-Lobos Popular』を発表したアミルトン・ゴドイ(milton Godoy)とガブリエル・グロッシ(Gabriel Grossi)が、再びデュオを組んだ。彼らの2026年リリースの続編は、『Os Filhos de Villa』つまり“ヴィラの子どもたち”。ブラジル音楽史に輝かしく残る様々な作曲家たちの代表作を取り上げつつ、ヴィラ=ロボスの音楽的遺産を辿って行く。
北欧を代表するピアノトリオ、ソーレン・ベーべ・トリオ(Søren Bebe Trio)による9枚目のスタジオ・アルバム『Gratitude』がリリースされた。デンマークの音楽賞にノミネートされた前作『Here Now』(2023年)で確立された、ベーシストのカスパー・テーイル(Kasper Tagel)とドラマーのクヌート・フィンスルー(Knut Finsrud)とのピアノトリオ編成で、オリジナル曲を中心に北欧らしい抑制された美学が貫かれた作品となっている。
インドネシアの首都ジャカルタの貧しい家庭に生まれ、ジャズ・シンガーとしての道を歩み、現在はカンボジアを拠点に活動するインタン・アンドリアナ(Intan Andriana)が、初のアルバムとなる『My Life in Jazz』をリリースした。音楽性はオーソドックスなジャズのスタイルを基本としつつ、マヌーシュ・スウィングなどの要素も加える。アルバムにはオリジナル曲に加え、インドネシアの名曲(5)「Bengawan Solo」なども取り上げるなど、インドネシアとカンボジアという二つの文化的ルーツを結ぶ象徴的な内容に仕上げている。
30年におよぶバンドの歴史の中で、クレズマーを揺るがない根幹に据えつつジャズ、スカ、マヌーシュスウィング、果てはヒップホップやエレクトロニカなどを融合しながら様々な表現を試みてきたアムステルダム・クレズマー・バンド(Amsterdam Klezmer Band, 通称:AKB)は、2026年の新譜『Diaspora』で、彼らの“根”である完全アコースティックなクレズマーに立ち戻ってきた。
オーストラリア・メルボルンを拠点に活動する気鋭サックス奏者/作曲家ジョシュア・モシェ(Joshua Moshe)が、彼の個人的なルーツやアート観を丁寧に込めた新譜『Art Don't Lie』をリリースした。8人編成のバンドを基本とした彼らの演奏は、一聴して分かるとおり、その音楽性はオーストラリアのジャズ・ミュージシャンとは思えない異彩を放つ。
今、これほど面白い一流のジャズトリオは、ほかにないと思う。 トリオ・グランデ(Trio Grande)。ギタリストのギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)、サックス奏者のウィル・ヴィンソン(Will Vinson)、そしてドラマー/ベーシストのネイト・ウッド(Nate Wood)から成るトリオだ。特に、器用にベースを弾きながらドラムスを叩く(ドラムスを叩きながらベースを弾く、の方が正しいかもしれない)ネイト・ウッドの姿を初めて見れば「大道芸か」と見紛うかもしれないが、聴けば聴くほどに彼らが音楽的にも“人並外れた”存在だと気付くはずだ。
アメリカ合衆国のピアニスト、ゲイリー・ヴェルサーチェ(Gary Versace)の新譜『Three Track Mind』は、今年(2026年)のジャズ・ピアノトリオ作でベストの一枚だろう。オーソドックスなピアノトリオ編成で、収録曲のうち半数がスタンダードという構成は、一見すると保守的でつまらなそうに思えるかもしれないが、何よりもジャズという音楽の即興によるインタープレイの楽しさに改めて気づかせてくれる。あるいは、2回演奏される「Autumn Leaves」といった古典的な楽曲でさえ、これだけ自由で創造的に生まれ変わることができるのだという最高の事例だ。
イギリス・リーズを拠点に活動する気鋭サックス奏者/作曲家、ジャスミン・マイラ(Jasmine Myra)による3作目のアルバム『Where Light Settles』。現代の英国ジャズを代表するレーベルであるゴンドワナ・レコード(Gondwana Records)から届けられた本作は、彼女のこれまでの路線を受け継ぎながら、より豊かなアンサンブルへと発展した意欲作だ。
バンドリンに革命をもたらしたアミルトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)率いるスーパートリオが、新作『NOVA』をリリースした。 本作は、2023年作『Flying Chicken』でショーロとジャズを超絶的な創造性で統合、唯一無二の“現代ブラジリアン・ジャズ”を提示し、そして『Live in NYC』(2025年)でラテングラミー賞の「最優秀ラテン・ジャズ/ジャズ・アルバム」を受賞したこのトリオの(現時点での)完成形であり、そして多数の才能ある国際的なコラボレーターの参加によって“究極形”とも思えるクオリティに到達した、恐るべき作品だ。
ウルグアイの作曲家/ベーシスト/プロデューサー、フランシスコ・ファトルーソ(Francisco Fattoruso)の新譜『Galaxy 4133』は、目の覚めるようなシンセ・ファンクが強烈な傑作だ。ウルグアイの伝統的なカンドンベの影響を受けたリズムに、マーカス・ミラー(Marcus Miller)を想起させる力強いスラップが縦横無尽に飛び交う。サウンドの軸にあるのはモーグ・シンセサイザー。アルバム・タイトルや収録曲名からも分かるように、近未来SF的な風情が漂う──確かにコンセプト自体は若干安直な印象も拭えないが、そうと分かっていても、この音楽はかっこいい。
特注のダブルネック・ギター(フレットレスとフレッテッド)を用い、独自の音楽を表現するイラン出身のマハン・ミララブ(Mahan Mirarab)。彼が初めて名門ACTレーベルより発表した『Unspoken』(2026年)は、そのタイトルが示すように、彼自身に内在する言葉にできない数々の想い──望郷、喪失、沈黙、憤怒、そして希望など──が込められた精神的な深みのある作品だ。