カリブ海が生んだピアノの魔法使い、グレゴリー・プリヴァ 初のソロピアノ作『Yonn』

Grégory Privat - Yonn

グレゴリー・プリヴァ、キャリア初のソロピアノ作

グレゴリー・プリヴァ(Grégory Privat)のピアノには魔法が宿っている。このマルティニーク出身の天才の音楽には、カリブ海の太陽の恵みと、大海原の向こうにある未知の世界への希望が灯る。

彼の新作 『Yonn』は初のソロピアノ作品だ。これまでの数々の名盤で魅せてきた魔法はソロになって弱まるどころか、さらに純度を増して鋭くなっている。極度に深い集中力から生み出される、流れるような旋律。このアルバムは間違いなく多くの人にとって心の浄化の役に立つだろうし、空間に散らばる音の糸を次々と瞬時に紡ぐ様を目の当たりにすれば、これはこの世でもっとも美しい時間芸術のひとつだと直感するだろう。

(7)「Song for Jojo」

いくつかの曲では、彼はピアノだけでなく自ら詞も書き、歌を乗せる。
(4)「Tonalité」(調性)は、名盤『Ki Koté』を彷彿させる外に向けられたポジティヴなエネルギーに満ちた明るく美しい旋律に乗せて、人それぞれが生まれながらに持ち、成長するにつれ幾度の困難を機に狂いがちになる“調性”を再発見することの重要性を歌っている。

(4)「Tonalité」

この作品を単なる心地良いBGMとして聴くのは損だ。
グレゴリー・プリヴァという現代のピアノの詩人が創造する音楽は、一対一で受け入れた瞬間にリスナーの心の中で魔法に変換される、そういう種類の得難いものだと思う。

マルティニークが生んだ現代のピアノの詩人、Grégory Privat

グレゴリー・プリヴァ(Grégory Privat)は、1984年仏領マルティニーク生まれのピアニスト/作曲家。父親のホセ・プリヴァ(Jose Privat)はマルティニークの伝統音楽をジャズと融合し1980年代に人気を博したバンド、マラヴォワ(Malavoi)に中途加入したピアニストだった。
6歳頃より父親に勧められピアノを始めたグレゴリーは、工業系の大学で学びつつジャズを演奏する生活をしていた。大学卒業後はしばらくエンジニアの職を得たが、音楽の夢を諦めきれずに27歳でプロのピアニストに転向。2011年のデビュー作『Ki Koté』で見せた圧倒的な作曲能力やピアノの技巧、さらにグアドループ出身のドラマー/パーカッショニスト、ソニー・トルーペ(Sonny Troupé)との2015年のデュオ作品『Luminescence』での異国情緒溢れる魅力で一躍世界に名を轟かせた。

2017年には前述のラーシュ・ダニエルソン(Lars Danielsson)の『Liberetto III』に現代ジャズを代表するピアニスト、ティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)の後継として参加。数々の名演を残している。

Grégory Privat – piano, vocal

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