• 2025-10-04
  • 2025-10-04

冒険心溢れるオーストリアの奇才デュオ。David Helbock & Julia Hofer『Faces of Night』

クラシックを原点としながら、大胆なエレクトロニカやヴォイス・パーカッション、ポエトリー・リーディングや変則バンドなど様々な表現方法で毎回驚かせてくれるオーストリア出身の奇才ジャズピアニスト/作曲家、デヴィッド・ヘルボック(David Helbock)が新たにデュオの相手に選んだのは同郷出身のチェリスト/ベーシストのユリア・ホーファー(Julia Hofer)。相当名義の新譜『Faces of Night』は、冒険心と遊び心に溢れる二人のデュオ演奏に加え、フリューゲルホルンのローレンツ・ラープ(Lorenz Raab)、ダブルネック・ギターの鬼才マハン・ミララブ(Mahan Mirarab)、そして歌手ヴェロニカ・ハルチャ(Veronika Harcsa)というユニークな才能もゲストに迎えた楽しいジャズ・アルバムとなっている。

  • 2025-10-03
  • 2025-10-03

メキシコ出身の作曲家イネス・ベラスコ、同郷の詩人にインスパイアされたラージアンサンブル作品

メキシコ出身でブルックリンを拠点とする作曲家/ドラマー、イネス・ベラスコ(Ines Velasco)が、メキシコの詩人ホルヘ・エスキンカ(Jorge Esquinca, 1957 - )の詩集『Descripción de un brillo azul cobalto』(英訳:Description of a Flash of Cobalt Blue)にインスパイアされて制作したアルバム『A Flash of Cobalt Blue』。10年の構想と準備を経て、クラウドファンディングで資金を調達。総勢17名のビッグバンドを率いた彼女の活動の集大成であり、傑作と呼ぶに相応しい作品だ。

  • 2025-10-01
  • 2025-09-30

知られざるリオの鬼才チアゴ・アムーヂ。カエターノやシコも参加する必聴新譜『Enseada perdida』

ブラジル・リオデジャネイロのSSW、チアゴ・アムーヂ(Thiago Amud)の2025年の新作『Enseada perdida』制作のきっかけは、ゼカ・ヴェローゾ(Zeca Veloso)からの情報だったという。チアゴは彼から、彼の父親で世界的に著名なMPBのレジェンドであるカエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)がチアゴの曲「Cantiga de ninar o mar」を、そして同じくレジェンド、シコ・ブアルキ(Chico Buarque)が「Cidade possessa」をレコーディングするのだと聞いた。これをきっかけに、チアゴは既存の楽曲に新たなアレンジを施し、カエターノやシコも参加するアルバムとしてまとめ上げた。

  • 2025-09-29
  • 2025-09-27

イタリア発。南米経由のソウル/ファンクバンド、Alèri 鮮烈なデビュー作『Quasi Dipinto』

イタリア北部、ベルガモ出身のSSWヴァレーリオ・ティントーリ(Valerio Tintori)が率いる大世帯バンド、アレリ(Alèri)のデビュー作『Quasi Dipinto』が素晴らしい。ソウル、ファンク、ジャズ、MPB(Música Popular Brasileira)などをミックスし、イタリア語の抗い難いグルーヴを塗した力強いサウンドが特徴で、様々な文化の出会いを原動力とした魅惑の音楽を奏でる。

  • 2025-09-28
  • 2025-09-28

混乱する現代社会の“解毒剤”。中東ルーツのジャズトリオ「L’Antidote」、デビュー作

いずれも中東にルーツを持ち、音楽家としてヨーロッパで成功を収めた3人──イラン系フランス人の打楽器奏者ビジャン・チェミラニ(Bijan Chemirani)、アルバニア生まれで戦火を逃れイタリアに来たチェロ奏者レディ・ハサ(Redi Hasa)、そしてレバノン出身でやはり内戦から逃れてフランスに移住したピアニストのラミ・カリフェ(Rami Khalife)──。伝統音楽、ジャズ、クラシック、エレクトロなどそれぞれ専門分野は微妙に違えども、音楽的にも文化的にも重なる部分も多い彼らが初めてトリオを組み、“奇跡的”とすら形容したくなるほどに神秘的で感情を揺さぶられる音楽を生み出した。

  • 2025-09-27
  • 2025-09-21

新世代の日常の憂いと不安、そして活力を端的に表現する人気女性デュオ Anavitória 新譜

ブラジルの人気女性デュオ、アナヴィトーリア(Anavitória)が6枚目となるアルバム『claraboia』をリリースした。日常の何気ないワンショットのようなジャケット写真が象徴するように、過剰な飾りを必要としない、温かく素敵な歌たちに彩られた作品となっている。

  • 2025-09-26
  • 2025-09-26

現代最高峰ドラマー、ネイト・スミスが魅せる世界一のグルーヴ。豪華ゲストも魅力『LIVE-ACTION』

現代最高のグルーヴ・メイカー、ネイト・スミス(Nate Smith)の新譜『LIVE-ACTION』は、おそらく彼のキャリアでもっとも訴求力が強く、その輝かしいキャリアを代表する作品となるだろう。これまでのように天才的なセンスでドラムスで表現しうるリズムの最高点を示しつつ、今作ではさまざまな一流ミュージシャンをゲストに迎え、ジャズを基軸としながらもポップネスの到達点を見せる。

  • 2025-09-24
  • 2025-09-24

イスラエルとロシア出身の3人による痛々しいほどの音楽表現。社会の不条理を映すアリエル・バルト新譜

イスラエル出身、現在はドイツ・ベルリンを拠点に活動する新世代のジャズ・ハーモニカ奏者/作曲家アリエル・バルト(Ariel Bart)が、数年前から粛々と表現を磨き続けてきた「The Trio Project」の集大成であり、そのデビュー作『After Silence』をリリースした。“抒情的”という言葉では軽い、もっと深い感情表現をハーモニカ、チェロ、ピアノという変則トリオで描き出した素晴らしい作品だ。

  • 2025-09-23
  • 2025-09-22

世界に癒しを──。伊ピアニスト、アントニオ・ファラオが新機軸を提示する『Heal The World』

イタリアを代表するピアニスト、アントニオ・ファラオ(Antonio Faraò)によるスタンダードなどカヴァー曲を中心とした新作『Heal The World』。アルバム・タイトルに採用されたのはマイケル・ジャクソン(Michael Jackson, 1958 - 2009)が湾岸戦争勃発と同時期の1991年に発表した反戦歌であり、“世界に癒しを”というテーマが今作全体に通底する。

  • 2025-09-22
  • 2025-09-22

TOMI & TOMI|アルゼンチンから来日中のトミ・レブレロ(バンドネオン)が、9月24日にライヴ。アルバム『TOMI & TOMI』では岸田繁との共作曲も再演。

 くるりの岸田繁との共演でも知られるアルゼンチンのバンドネオン奏者、トミ・レブレロ(Tomi Lebrero )が来日中で、ライヴもしてくれています。9月24日(水)には、代々木上原のハコギャラリーで演奏します。今回は、ギター /ピアノ/ボーカルのトミ・ムティオ(Tomi Mutio)とのデュオでのライヴ。
 この2人のトミは、先日アルバム『TOMI & TOMI』をリリースしたばかり。アルバムでは、くるりの名曲「Bremen」に、トミ・レブレロがスペイン語の歌詞をつけた「Kfrefeld」も収録しています。

  • 2025-09-21
  • 2025-09-15

驚くべき意思疎通によって創られた魔法のような北欧的即興。ヨーナ・トイヴァネン・トリオ『Gravity』

ヨーナ・トイヴァネン・トリオ(Joona Toivanen Trio)はフィンランドでももっとも長い活動歴を誇るトリオのひとつだ。日本でも、彼らの存在は比較的知られているだろうと思う。なにせ、彼らのデビュー作『Numurkah』(2000年)を“若干21歳のトリオ、フィンランドからの新風!”と紹介し大々的に売り出したのはあのレジェンダリーな澤野工房だったからだ。実際、彼らの音は北欧ジャズらしいリリカルさがあり、さらに若手特有の背伸びした青さもあり、非常に魅力的に映った。

  • 2025-09-20
  • 2025-09-19

禅の精神と呼応する夫婦デュオ、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバト 魂の安寧を導く新作

あのうんざりするような商業主義があらゆる音楽を食い尽くそうとする時代にあって、ブラジル・ミナスの夫婦デュオであるヘナート・モタ(Renato Motha)とパトリシア・ロバト(Patricia Lobato)は、もう20年以上のあいだ、商業主義からもっとも遠いところで彼らの興味の赴くままにナチュラルに純真に音楽による表現を重ねてきた。2025年の新作『Qualquer coisa natural』でも、彼らはなにも変わらず、ただ純粋に詩やギターや歌を通じて豊かに生きることの悦びを表している。

  • 2025-09-19
  • 2025-09-19

適度な不穏とグルーヴの快感に魅了。ロンドンの現代ジャズに独自の存在感を放つヨニ・メイラズ新譜

イスラエル出身、ロンドンを拠点に活動する鍵盤奏者/作曲家ヨニ・メイラズ(Yoni Mayraz)の待望の新譜『Dogs Bark Babies Cry』。衝撃的なデビュー作だった前作『Dybbuk Tse!』からはメンバーを完全に一新し、ベースのトム・ドリエスラー(Tom Driessler)とドラムスのゾーイ・パスカル(Zoe Pascal)が生み出すシャープがグルーヴがヨニ・メイラズの音楽的世界観によりマッチした作品となっている。

  • 2025-09-17
  • 2025-09-17

大西洋を超え共鳴するアフロ・ディアスポラたちの音楽。Balimaya Project × Discos Pacifico All-Stars

大西洋を超え、現代のアフロ・ディアスポラ音楽を体現するふたつの音楽集団が出会い、『Calima』と題された素晴らしい作品を残した。一方はイギリス・ロンドンを拠点に活動し、西アフリカのマンデ族のリズムとジャズを融合する人気バンドのバリマヤ・プロジェクト(Balimaya Project)。もう一方は南米コロンビアを拠点とし、マリンバを中心にアフロ・コロンビアン音楽の熱気を表現するディスコス・パシフィコ・オールスターズ(Discos Pacifico All-Stars)。あわせて16名の規模となる大所帯で、複雑に連帯したリズムと即興的表現が絡み合い、ときにはヴォーカルやコーラスによるアクセントも加えた最高に高揚感のある音楽を聴かせてくれる。